5/5をもって、コロナ病棟との3か月契約が終了しました。退職に伴って寮を出たので、実家への引っ越し作業に追われて更新が滞ってしまいました。
感染拡大が著しい神戸で、これからはコロナ患者のホテル療養施設で派遣ナースをしながら、国際協力に携わるための就職活動や勉強を進めていく予定です。
今回の記事では、退職時点でのコロナ病棟の現状と、病院外での療養者の状況、医療崩壊にどう対応していくかについて書いています。
私が知っているのは大阪のたった一つの病院の状況であり、それぞれの地域や施設により状況は異なります。一看護師が経験している一つの例として読んでいただけると幸いです。
前回の記事では、4/24時点でのコロナ病棟の現状についてだけではなく、入院患者の体験にも焦点をあてて書いたので、興味のある方には読んでいただけたらと思います。
前回の記事:4/24 私が働くコロナ病棟の現状と、患者が体験していること
私が働く軽症・中等症病棟の現状(5/5時点)
私の職場はもともと軽症・中等症病棟でしたが、前回の記事でも書いたように、大阪では重症病棟の空きがないため、軽症の病棟でも重傷者を観ています。
前回コロナ病棟の現状について書いたのが4/24で、そこから10日間たった退職時点でも状況は悪化をたどる一方です。
私の病棟でも重傷者数はどんどん増えています。対応できるよう物品や環境を調整し、重症者を観るための環境づくりが進んでいます。
重症管理の経験があるスタッフを追加で配置し、重症管理の経験がない看護師も、経験のあるスタッフと一緒に、勉強しながら経験を積んでいます。
感染が拡大していない地方からの応援看護師も何人か来てくれていて、協力しながら業務にあたっています。
病院全体では、ICUや救命の医師と情報共有するためのシステムを作ったり、病院内で試行錯誤しながら仕組みづくりをしています。病院内だけではなく、他の病院のコロナ対応の責任者同士でもオンライン会議を行い、情報共有や調整をしているようです。
入院待機者が多く、病床を一つでも空けるため、重症コロナセンター等、他の重症管理が出来る場所が空けば、私の病棟から転院させて、新たな患者を受け入れます。死亡退院や軽快退院、又は隔離解除となって部屋が空いたらまたすぐに新しい患者が入ってくる状態です。
これまでの記事でも、重症化患者の若年化について書きましたが、それは今も変わっていません。今は30台の重症患者さんも増えています。既往歴のある患者もいますが、そうじゃない患者もいます。
若年者の重症化が明らかに増えていることは、テレビでも報道されている通りで、入院中の患者もテレビでそれを見ています。
相変わらず患者さんの多くは絶望の中にいて、患者の不安に寄り添ったり、話を聴いて少しでもストレスを軽減できるよう関わる努力はしていますが、うつ症状を発症する患者も増えています。患者が体験する恐怖や不安については前回の記事にまとめています。
入院待機者が増えているため、何時間も救急車で過ごす患者や、一時待機施設から入院となる患者が増えました。
重症管理が可能なベッドが空かないため、テレビでも、呼吸器装着などの積極的治療を希望する人ほど入院先が決まりにくいことが報道されています。
そんな中、その報道をみた患者が、呼吸器装着を希望しないといえば入院させて貰えるだろうと、呼吸器を希望しないと偽って入院したケースもありました。
結局その患者は入院してから呼吸器装着を希望され、重症管理となりました。私たちとしても、その患者を責めることは全くもって出来ません。自分の命がかかっているとき、少々卑怯と思われる手段を使ってでも命が助かる可能性があるならその手段にたよるのは当然です。
それぐらい、必要な治療が受けられない医療の現状があります。
病院の外で過ごす陽性者
大阪での入院待機者はなんと3000人以上いるとのこと。自宅療養者数は10000人以上いるそうです。全国ではなく大阪府だけでの数字です。
私は病棟でしか患者をみていないので、病棟での様子しかわかりません。しかし、ホテルや自宅での療養者が重症化してから入院してくるケースが増えています。これだけ自宅療養者やホテルでの療養者がいるということを考えると、病院の外こそ、大変なことになっているのではないかとも思っています。
すでに大阪や兵庫では、ホテルや自宅への医師の往診や、オンライン診療、内服処方、在宅での酸素投与が始まっています。
これがどういうことか、出来るだけ分かりやすく書いてみたいと思います。
まず、通常は病院であればCTやレントゲン、採血をおこなった上で患者の状態を評価し、それに合わせた治療方法でアプローチします。
医師の往診でオンライン診療が始まったことはよいことですが、もちろんレントゲンなどの検査は出来ないため、十分に評価できない状態で治療を開始します。それも自宅で点滴などの管理は難しいため、経口内服しかできません。
在宅酸素療法をしている患者も増えていますが、本来であれば酸素が必要なぐらい悪い状態では、点滴を含め病院での治療や状態観察が必要です。でも、自宅で出来る治療は限られます。
病床が空かない今、私が知っているケースでは自宅で5L程度の酸素を使用しているケースもあります。この場合酸素ボンベが家に届き、一緒に配布される体内酸素を測る機械を使用して患者自身がモニタリングをしながら使用します。
これが恐ろしいことだというのは医療従事者なら分かると思うのですが、一般のひとでもわかるように、これがどうゆうことか説明して生きます。
まず、医療現場では通常、酸素はマスクを使って最大15Lまで投与でき、15Lでも体内の酸素濃度が保てない場合は呼吸器管理しか治療の選択肢がありません。
そして、酸素は呼吸状態に合わせて量を調整する必要があり、多くても少なくてもダメなので、体内酸素濃度のモニタリングをしながら投与量を調整します。
コロナの肺炎に関しては、重症化のスピードが速いです。私が働いていた病棟でも、日中に酸素5L程度使用して体内酸素濃度を保てていた患者が、どんどん体内酸素濃度が下がり、一晩で15Lまで増量が必要となるようなケースをこれまで多く見てきました。
病院であれば、寝ている間も指につけている機械で終始看護師がモニタリングしているので、患者が寝ているときも看護師が勝手に酸素量を調整しています。
それが自宅であれば、しかも独居であった場合、急激に悪くなっていることに気が付かない可能性もありすごく危険です。
特にコロナの患者は、すごく悪くなるまで呼吸苦の自覚が乏しいという特徴があります。
最大量である15Lの酸素投与をしている患者でも、呼吸苦を感じない患者も多いのです。ということは、体内酸素が下がっていることに気づかず、気づいた時に救急車を呼んでも間に合わないということも考えられます。
これらから考えて、酸素投与が必要なほど悪くなっている患者が、医療者の目が届かない自宅で療養することはすごく危険なことだとわかるかと思います。
慢性的に酸素投与が必要な患者(COPDや心不全など)が自宅に在宅酸素を導入することはありますが、それは入院中に使用方法などの教育をしっかり受けたうえで使用します。
呼吸状態を見極める必要や、酸素ボンベによる火災のリスク等も理解する必要があるからです。
今回は自宅での酸素投与はやむをえない非常事態ですが、自宅で酸素を使用するということは、様々なリスクがあります。
また、身体面だけでなく、悪くなっていくのに医者に診てもらえず、治療を開始できない患者さんやその家族がどれだけ心細く、恐怖を感じているかはかり知れません。
保健所の職員の方や救急隊、ホテル療養のスタッフも、この状況に対応するのはすごく大変だし、悪くなっていく患者を目の前にして、入院先が見つからず治療を開始してもらえないもどかしさと戦っておられると思います。クレーム対応も然りです。
医療崩壊 これから医療機関はどう変わっていくべきなのか
ここまで今の現状がどれだけひどい状態かばかり書き、ネガティブなことばかりの記事になってしまいました。
ここからは、それにどう対応したらいいのかについて私なりに考えたことを書いてみます。
まず、医療スタッフや病床など、医療資源が足りないことに関しては、他の都道府県からの応援や、他の地域への搬送などで、助け合っていくシステム作りが必要です。すでに応援や他地域での受け入れは始まっていますが、あまりにも少ないし遅れています。
簡単なようですごく難しいと思いますが、そこは政府などの保証も充実化してもらい、他地域からの応援や病床を増やしていく必要があります。他地域への搬送は、医療機関の負担だけでなく、知らない土地にいきなり入院させられる患者さんや家族にとっても負担が大きいですが、今の状況ではある程度仕方ないと思っています。
あとは、オンラインでの診療を増やして効率化し、少ないスタッフでの対応を可能にしていくことだと思います。
オンライン診療に限らず、様々な面でデジタル化し、効率化を進めていくことが大事だと思います。
こないだ、私が入っている原寛太さんのオンラインサロンで、他のサロンメンバーに以下の記事を紹介していただきました。
日本のコロナ対策はいつ何を間違えたのか?【3度目の緊急事態宣言】
いろいろと書かれている中でも、特にデジタル化の遅れという点ですごく納得しました。ぜひ読んでみてほしいです。
私が働いていたコロナ病棟でも、毎日保健所から電話があり、それも患者一人一人についての病状について電話で情報共有をするのです。莫大な患者数がいるのに、一人一人です。(これは市町村によるかもしれません。私が働いていた地域では、という話です。)
また、入院先の調整に関してもほとんどが電話連絡です。多少はオンライン化が進んでいるようですが、まだまだ自宅療養者や濃厚接触者との連絡も電話が多いようです。
テレビで報道されている保健所等の様子をみても、多くの連絡・調整を電話で行っている印象です。(一部の情報のため一概には言えませんが)空き病床の把握などをデジタル化し一括管理するなど、もっと効率化が可能ではないかと思っています。
書くときりがありませんが、他にもデジタル化が可能なことはたくさんありそうです。
そこで働いたことがなく現場のことは分からないので、いろんな事情があるだろうし、デジタル化した際の個人情報保護の難しさなども、デジタル化が進まない要因のひとつかもしれません。
でもアナログなシステムから大きく変えていかなければ、この医療崩壊には対応していけないのではないかと思っています。
少しずつ医療システムを変革しようとする動きはありますが、このスピードではとてもじゃないけど今の医療の現状に追いつけないと思います。
ざっと、どう対応していくのが良いか自分なりに書いてみましたが、まだまだ考えが浅いと思うので何かよい意見や文献・記事などあればコメントででも共有していただきたいです!私も勉強していきます。
来週からホテル療養での派遣看護師を始めるため、そこでの状況についても書いていく予定です。
まとまりのない文章ですみません。
最後まで読んで頂いた方、ありがとうございました!
コメント
[…] ※追記 5/7に最新の状況もアップしました→5/5 私が働くコロナ病棟の現状と、病院外の現状 […]
[…] 5/5 私が働くコロナ病棟の現状と、病院外の現状 […]
[…] 5/5 私が働くコロナ病棟の現状と、病院外の現状 […]
[…] 以前の記事でも書きましたが、酸素投与が必要なレベルの患者を自宅やホテルで見ることは、リスクが伴います。 […]