「すべては救済のために デニ・ムクウェゲ自伝」を読んで

コンゴ民主共和国の産婦人科医師であるデニ・ムクウェゲさんの書いた、「すべては救済のために デニ・ムクウェゲ自伝」を読みました。

今日の記事は、戦争や性暴力について書くので重くて暗い内容になりますが、現実に世界で起こっていることなのでぜひ最後まで読んでいただければと思います。

本を読んだ感想

本の中に書かれている現実が本当に重くて苦しくて、私は読み始めた初日、一章すら読み切ることが出来ませんでした。

大切な人を殺されたエピソードや、病院が襲撃された経験など、想像するに堪えない場面はたくさんありましたが、何よりも衝撃だったのは性暴力の描写や、被害者の身体の状況です。

これまで持っていた性暴力というイメージだけでは、想像すらできないような恐ろしい残酷な暴力が書かれています。ある程度コンゴの性暴力のことを調べてから読んだにも関わらず、私は本当にショックで、しばらく読み進めることが出来ませんでした。

でも、世の中には、絶対にあってはならない、非情で残酷な現実があるのだと改めて再認識させられたし、考えさせられる本でした。

苦しんでいる患者や市民を前に、苦悩するムクウェゲ医師ですが、人々を理解し受け入れ、愛を持って接し、信念を貫く姿勢は、同じ医療者としても、人としても、尊敬の念を抱きます。

デニ・ムクウェゲ氏ってどんな人?

デニ・ムクウェゲ氏は、コンゴ民主共和国の産婦人科医師です。

コンゴで病院を設立し、性暴力被害にあった多くの女性を治療し、その精神的ケアにも当たっています。世界各地で演説を行い、性暴力の根絶や、女性の人権、背景にある紛争鉱物などの問題を訴え続けています。

性暴力をなくし、被害者が尊厳を持って生きられる世界にするために人生をかけて活動されていて、2018年にはノーベル平和賞を受賞しています。

※参考:ウェキペディア デニ・ムクウェゲ

コンゴ民主共和国ってどんな国?

コンゴ民主共和国は、中部アフリカに位置する国で、日本人の私たちには余り馴染みのない国かもしれません。私も数年前までこの国のことをよく知りませんでした。

コンゴの紛争では600万人以上もの人々が犠牲になっており、その数は第二次世界大戦後におきた紛争では最も多いにも関わらず、世界から注目されることが少ない国です。

コンゴ民主共和国は、レオポルド2世というベルギーの国王たった一人の支配下に置かれていた植民地の歴史があります。その時代の分断統治、近隣国の紛争や、国内で採掘できる資源の利権争いなど、複雑で闇の深い歴史・背景があって、今も情勢は不安定で各地で紛争が続いています。

今も多くの難民や、国内避難民を出していて、約450万人が国内で避難を強いられる人道危機が起こっています。

武器として使われる性暴力

冒頭でも書いた通り、性暴力ということばでは、私が想像出来なかったような、恐ろしくて残酷な暴力が、コンゴ民主共和国ではまん延しています。

コンゴは女性にとって世界最悪の場所とも呼ばれています。この国では性暴力が、人々に恐怖を植え付けて支配し、コミュニティを破壊するための武器として使われています。組織的に性暴力をつかうことで、費用がかからず、安価にコミュニティを屈服させることが出来ます。

ここでは幼い女の子から高齢者まで、暴力の対象になります。

被害にあった女性・少女は、身体的な傷だけではなくて、精神的にも傷つき、差別を受け社会で孤立し、居場所を失います。

決して私たちと無関係じゃないコンゴの問題

日本から遠いアフリカの話は、なかなか身近に感じることは難しいです。

私たちに出来ることは少ないかもしれません。でも、コンゴ民主共和国の紛争を生み出している一つの原因は、紛争鉱物です。コンゴにはタンタル等、レアメタルがたくさん埋まっていて、紛争を生み出しています。私たちが毎日使っているスマートフォンなどは、こういったレアメタルが使用されています。

こういった鉱物の利権争いが多くの犠牲者を生んでいて、これらの鉱物は武装勢力の資金源になっています。

私たちは日々、こういった鉱物資源や、そこで働く人たちの恩恵を受けて便利な生活をしています。

先進国はこういった鉱物資源を手に入れるために資金をつぎ込んでいるし、コンゴでの紛争が続く原因である兵器は、先進国からもたくさん輸出されています。

この辺は私もまだ詳しくないのですが、私たちが普段銀行に預けているお金は銀行が運用していますが、武器ビジネスを行う企業に投資されていたりすることもあります。武器ビジネスは、戦争が続くことで成り立ち、武器ビジネスが戦争を拡大させます。

知らず知らずのうちに、私たち日本人も、便利な生活のために紛争に加担しているかもしれません。

こうした現実に目を向けるためにも、多くの人に読んでほしい本です。

私はまだ観れていませんが、映画もあります。

コンゴにおける少年兵や、性暴力の問題は原さんの動画がすごく分かりやすいです。衝撃的な内容が続きますが、ぜひ見てみてほしいと思います。

【子どもが戦う?!】世界最悪のコンゴ紛争、原因は日本人が毎日使う○○だった
【女性にとって世界最悪の場所】なぜコンゴでは性暴力が絶えないのか?

紛争鉱物の一つであるダイヤモンドについては、「ブラッド・ダイヤモンド」というレオナルドディカプリオ主演の映画でも取り上げられています。

過去におすすめ映画の中に挙げているので、興味があるひとはみてみてください!

映画月間 国際問題を扱う映画 Part.1※ネタばれあります

他のおすすめの本

白川優子さん著「紛争地の看護師」を読んで

小川真吾さん著「ぼくらのアフリカに戦争がなくならないのはなぜ?」を読んで

コメント

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