【8/13時点】宿泊療養施設の現状と、第5波の動向

ながらくちゃんとした記事を書いていなかったので、コロナ関連の記事は久しぶりです。

書き方によっては読む人に誤解を与えたりする可能性もあって、なかなか書き進められませんでした。

世間のコロナ慣れや、オリンピックのムードの中にある第5波ですが、私はかなり厳しい戦いになるような気がしています。

今回も私の経験をもとに、私が分かることや、私の考えを書いていきます。

※8/13に書いています。日々状況は大きく変わることをご理解ください。

過去のコロナ関連の記事:新型コロナウイルス関連記事(コロナ病棟や、宿泊施設における記事を書いています。)

第五波の、私が働く宿泊施設の状況(8/13 )

私が今月主に派遣されているのは、私が住んでいる県の宿泊療養施設で、100名程度が入所されています。

次の項でも、現場の状況をおり交ぜながらかくのでここでは簡単に。 また、数ある施設のひとつの状況として読んでいただけると幸いです。

第五波になって現場で感じることをまとめると、以下の3つかと思います。

年齢層が若年に移行

  ワクチンの影響か、今月に入ってから私の施設では70歳台はみていません。

 10歳~50歳台の入所者が多く、10歳以下~20歳台の若年層も有症状者がほとんどです。

30歳台~60歳台の中等症Ⅱ(肺炎・酸素が必要)の数が多い ※重症度については次の項で説明します

  連日30歳~60歳台の方に酸素を導入し(中等症Ⅱに分類)、病院に送っています。

  大体ですが、約100名の入所者がいて、1日当たり1~5名(平均3名ほど)です。

  既往歴ない方がほとんどです。BMI30以上の方が多いですが、普通体系の方もたくさんいます。

軽症者・中等症Ⅰでも症状がかなり重い

  軽症・中等症Ⅰと分類されても、高熱や頭痛、咳・嘔吐が長く続く等、症状が重い人が多いです。

先週までは、入院が必要と私たちが判断すればスムーズに受け入れ先が決まっていましたが、今週に入ってからは入院が決まりづらくなっています。

兵庫県では、8/12時点で、病床使用率は54.8%となりました(兵庫県ホームページ)。(第4波よりさらに病床数は多く確保済)

50%台なのでまだ病床はありますが、入院してしばらく滞在することを考えると今から重症化リスクの高い人を選んで入院を受け入れないといけない現実があります。

重症度分類のギャップ

実際の重症度と、一般の方が想像する重症度には、大きなギャップがあると感じます。

以下の画像が、厚労省が出す診療の手引きをもとにつくった重症度分類です。

重症ICUまたは人工呼吸器が必要
中等症Ⅱ(呼吸不全あり)酸素投与が必要
中等症Ⅰ(呼吸不全なし)息切れ、肺炎の所見
軽症呼吸器症状無し せきのみ 息切れなし

一つ目のポイントは中等症Ⅱで、

酸素投与が必要=酸素なしでは重篤な状態、もしくは亡くなる可能性がある という点です。

2つ目のポイントは、

重症の人工呼吸器が必要という状況は、多くは鎮静をかけて眠った状態で喉に管を入れて呼吸器を装着されている状態で、亡くなる可能性があるという点です。

症状は個人差があり、一概には言えませんが、イメージでいうと、この画像がすごく分かりやすかったので紹介しておきます。

Image

米国内科専門医:安川康介さんのTwitterより

※恐怖をあおる意図はありません。ただギャップを解消したいです。


第五波における陽性者の特徴

私が働く施設での現状もおりまぜながら、国内の第五波の動向を書いていきます。良いデータをみつけられなかったものは、都道府県別のデータも使っています。

私は特に、2の中等症の増加に注目しています。

1.年齢層の変化について

まず、ワクチン接種の影響か、60歳台以上は全体の6%(日本全国)程度と、感染者の層が変わってきています。 現時点で、高齢者の感染者は第4波と比べて低くなっています。

数と割合両方を表すグラフが大阪しか見つかりませんでした。☟

流行期別・年齢区分別 報告数(左)および構成比(右)8/8時点 大阪

surge.png

(大阪府感染症情報センター:http://www.iph.pref.osaka.jp/infection/disease/corona.html)

見て分かるように高齢者の割合は減っています。

ワクチン接種の効果だと思っています。私の職場では、私が知る限り2人ワクチン接種済みの方がいて二人とも有症状でしたが、重症化していません。(一人は2回目接種済み、一人は1回のみ)

2.中等症Ⅱの増加

第五波で今私が注目しているのは中等症です。私の職場でも、既往のない30歳~60歳台の中等症が増えています

中等症の中でも中等症Ⅱの患者がどれぐらいいるのか、というデータが見つけられないのですが、現時点では、酸素が必要な中等症(中等症Ⅱ)以上で入院調整がかかる場合がほとんどなので、私は下のデータが中等症Ⅱ+重傷者の多さをある程度表せるのではないかと思っています。

入院治療等を要する者等推移 (厚労省ホームページ 8/12時点 )

みて分かる通り、第五波では入院が必要な陽性者がかなり増加しています。

そして、高齢者の感染率が低いにも関わらず、今週に入ってすでに重症者の数は第4波のピーク時よりも高くなりました(厚労省データ参照)。

重症者の推移(厚労省:https://covid19.mhlw.go.jp/)8/12

いくら高齢者の感染者が減っても、単純に感染者が多く分母が増えると、重傷者は増加します。

そして、このまま中等症Ⅱが増え続け、必要な治療が出来ない、必要なモニタリングが出来ないとなれば中等症の方々の重症化が進み、重症者はさらに増加すると思われます。

何度も書いたように、中等症Ⅱというのは酸素投与を含む治療をしなければ、重篤化する可能性が非常に高いからです。亡くなる可能性も高くなります。

3.軽症は大したことない?

たしかに今でも無症状のPCR陽性者はいます。

でも私が働く施設入所者に関して言うと、軽症者(肺炎無し)でも、発熱がかなりしぶとく続く方が多く、ちょっとした風邪症状で済まない人が多いです。38℃~39℃の発熱が1週間以上続き、退所が延期になる人も第4波より多いです(本来は発症から10日で退所)。

薬を飲んで少し下がっても、またすぐに熱があがる人が多く、咳や倦怠感、関節痛、頭痛などが何日も続くのは、心身ともに応えます。

これに関しては、第五波に限った軽症者の症状の集計データは見つけられなかったので、あくまで私が現場で感じる印象です。

中等症Ⅱ ”酸素投与が必要” ってどういうこと?

難しいことは書きません。シンプルに言うと、酸素投与が必要=体の中に酸素が足りない状態です。

足りない分を、酸素を吸って補います。

よく患者さんが、

酸素投与=呼吸を助ける、呼吸を楽にする と考えていることがあります。

完全に間違ってはいるわけではありませんが、医療者とはかなりのギャップがあります。

酸素投与が必要な状態=酸素がなければ必要な酸素濃度が保てない

ということで、必要な酸素濃度が保てないと、苦しいのはもちろん、低酸素で死亡する可能性があります。

酸素投与で多くの方が助かることは事実ですが、このように、酸素がなければ危険な状態だとしても、重症ではなく中等症です。

第4波のときも、病床が足りず自宅で酸素投与が行われていましたが、第五波でもそれが時間の問題です。

以前の記事でも書きましたが、酸素投与が必要なレベルの患者を自宅やホテルで見ることは、リスクが伴います。

”コロナは大したことない” の考えに対して思うこと

新型コロナウイルスに関しては、いろんな情報・意見が飛び交っています。

今でも一部のコロナ懐疑派・軽視派の方々が、コロナは2%しか死なないのに大げさだ、ただの風邪だと話していますが、2%しか死んでいないのは発症後の治療の成果だとも言えると思います。

この記事で説明してきたように、適切な治療(酸素投与含む)が出来なければ何パーセントの方が亡くなっていたか、考えたくもありません。

そもそも個人的には死ななければ良いという考えはないし、2%という数字も小さいとは思いません。(8/13、新たに20365人の新規感染者がいたので、もしPCR陽性者の2%が亡くなるとすると、今日1日だけで感染した方のみ見ても今後400人が亡くなる計算。あと、80歳以上だけで言うと致死率14.2%です。(厚労省データ

軽視する方々を批判する意図はありませんが、こういったことは理解していただけると良いなあと思って書きました。

逆に私も、現場にいてコロナ渦の特に怖い部分を中心に見てきてる分、リスクについては偏った捉え方があるかもしれません。

さいごに

第5波、私はすごく厳しい戦いになると思っています。

今後、治療が必要な人がさらに入院できなくなる状況が予想されます。

療養施設ではすでに入院が難しくなり始めていて、中等症Ⅱの方も入所されています。

リスクの高い入所者は、看護師が何度も電話をかけて健康観察を行い、必要であれば訪室して対応します。でも病院のように患者に目が届かない限界があり、”部屋で亡くなっていたらどうしよう”と思いながら仕事をしています。

病院のようなモニタリングが出来ない以上、本当にあり得ると思っていて、朝方入所者が電話にすぐ出られなかったときはすごくヒヤヒヤします。

酸素投与を含む適切な治療で多くの命が助かることを思うと、いかに中等症の人が重症化する前に入院できる医療体制を整えられるか、が大事になると思っています。 一部の地域が行っている、入院までの一時待機施設(または酸素センター)も、医療者の目が届かないホテルより安全ではないかと思っています。

今回の記事は医療体制にまで触れませんでしたが、第五波が今どのような局面にあるか、少しでもイメージしてもらえたらいいなと思って書きました。

感想や意見、指摘などあればなんでもコメントください☻

今回、公開されているデータも使ってみたのですが、統計に関して初心者なので、データの解釈・引用方法等で間違いがあれば教えてください。

読んでくださった方、ありがとうございました!

過去の記事☟

宿泊療養施設の記事

5/13コロナのホテル療養施設の現状について(施設がどんな場所か、施設の課題について)

コロナのホテル療養施設の現場で感じた課題(看護師の仕事内容、医療システムの課題について)

コロナ病棟の記事

4/24 私が働くコロナ病棟の現状と、患者が体験していること 

5/5 私が働くコロナ病棟の現状と、病院外の現状

他にも、自分自身のこと、留学のこと趣味のアウトドアご飯のこと本や映画の紹介などの記事を書いています!

コメント

  1. 西崎にも読んでもらってすごいいい記事!って言ってた!
    コロナ患者に直接関わってないと知らないことも多くて、中等症と重症の違い分かってなくて勉強になったやって〜!

    私も全然知識ないけど理解できる内容で勉強になりました◎

    • 読んでくれてありがとう!嬉しい~~!!西崎も読んでくれてありがとう☻

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