5/13コロナのホテル療養施設の現状について

次の就職までの間、コロナ陽性者の、ホテル療養施設での派遣ナースを始めました。

ニュースでは、コロナ病棟や保健所の取材を観ることは多いですが、ホテル療養はいまいち印象も浅く、想像がつかない人が多いのではないでしょうか。

少しでも一般の方が療養生活をイメージしてもらえるよう、現状を書いていくので、一緒に問題点や課題について考えていきたいです。

まだ4日しか派遣されていないのですが、思うことが多くて長くなるため、Part1はホテル療養そのものについて、Part2では働く側のシステムの問題について書きます。

※注意※

全国に数あるホテルのうちたった一つに、たった4日間派遣されただけで書いています。聞く話によると、同じ地域であってもホテルによって仕事内容や重症度もかなり違うとのことです。特に今は、ホテルでの重症度があがっていて、その役割はどんどん変化しています。こんな現状のホテルもあるんだと、一つの例として読んでいただきたいですし、私も偏った情報を与えないよう注意して書いています。

ホテル療養施設とはどんな場所か

宿泊療養施設とあらわされる場所で、自宅では隔離が難しい陽性者や、健康観察が必要な陽性者の療養のために作られました。ただ、今は入院ベッドが埋まっているため、多くのホテルでは酸素投与や内服処方などの治療や、診察が始まっています。

陽性者の生活 -私の派遣先の場合-

<入所日>

・自宅で荷物をまとめ、専用のタクシーや車でホテルに到着(ここの時点でどんな説明をうけてホテルに来たのか、本当に様々。保健所や職員によってかなり異なる印象)

・ホテル入り口で、入所中の注意事項や連絡事項が書かれたパンフレットを受け取り、健康観察の方法などをガラス越しで簡単に説明を受け、鍵を受け取り部屋に移る

・自室でパンフレットを読んだ入所者は、承諾書にサインし、所定の場所に提出。健康観察を自身で行い、専用アプリに入力。

・入所当日は、入力された健康観察表を確認した看護師から電話があり、表をもとに電話で体調を確認。

<当日以降のルーティン>

・一日に2回、決まった時間に健康観察表を入力。看護師からはの電話は、1日1回は必ず、あとは高熱時や、呼吸状態悪化時など、状態に合わせて必要と判断されたときのみ電話がある。

・食事や健康観察の時間には館内放送がながれ、食事は放送が流れたら廊下に取りに行く。

・薬が欲しい時や、体調の相談をしたいとき、入所生活についての相談などは、適宜看護師や事務スタッフに内線電話。

以上が私が働くホテルでの陽性者の生活です。

<退所について>

私が働く県では、退所可能かどうかの判断はをするのは保健所です。定められている基準(詳しく書きませんが、発症日から10日が経過し、直近72時間に症状がないこと など。)を満たしたとき、看護師が保健所に電話で許可をもらい、入所者は退所できます。

医療スタッフとのかかわり

看護師とのかかわり

私の職場では、状態が著明に悪化しない限り、看護師は部屋に一切いかないことになっています。

状態が悪くない人は、看護師からの電話連絡が1日1回です。その代わり一日三回のご飯を取りにきているかや、一日2回の観察表の入力をしているかどうかが安否確認の1つにもなっています。ご飯を取りに来ない、観察表の入力がないといったことがあれば、看護師から電話が入ります。

もちろん、状態観察がこまめに必要と判断されれば、看護師から適宜電話での体調確認が行われます。入院が必要と判断したときは、医師に報告・相談の上、入院調整機関に電話で依頼します。病床のが空かず、決まらない場合もありますが、入院が決まれば、専用車で搬送してもらいます。

入所者は24時間いつでも看護師に電話で体調の相談ができます。

薬や必要物品(おかゆやお水など)を手渡すときや、どうしても直接観察が必要なときは、入所者にスタッフの階まで降りてきてもらい、ガラス越しに対面してものを手渡したり、健康観察を行います。あくまでガラス越しであり、看護師はレッドゾーンにはいかないため、血圧測定や聴診といったことは出来ません。

ただし、患者がスタッフ階に降りてこられない身体状況であったり、状態が増悪著明のとき、酸素を開始するとき、患者が入院となる時、電話で応答がなく安否確認が出来ないときは、看護師が防護服を着用して入所者の部屋に伺います。

うちでは、看護師がお渡しする薬は基本的に市販薬です。病院で処方されるような薬は、基本的に病院ではないため処方できません。

最近になって、ホテルでの重症度が上がり、私の職場では市販薬以外の内服処方も始まっています。それでも、ごく一部のわずかの内服薬(ステロイド薬、咳止め薬など)で、本当に必要とされた場合のみ、医師の指示のもと看護師が渡します。

※注意※

この辺は特に、ホテルや地域によって大きく違うと思われます。重症度の高いホテルでは、もっと積極的な医療行為を行う場所も増えており、そういったホテルではもちろん看護師がもっと入所者を訪室しているはずです。今後さらに重症度があがれば、そのようなホテルも増えてくると思われます。

医師の診察

私が派遣されているホテルに医師は常駐はしていませんが、重症度が上がったことをうけて当直医師が1日1回来訪するようになりました。それ以外の時間は、必要時に看護師が当直医師に電話をかけて指示を仰ぎます。基本的に電話で完結させ、直接的な診察は行いません。どうしても診察が必要な場合は、医師と入所者が直接電話するか、スタッフフロアでガラス越しに行います。状態が非常に悪い場合のみ、防護服を装着して直接会って診察を行います。

看護師は24時間オンコール医師に電話が出来るので、酸素開始時や、入院が必要と判断した際にも医師に報告や相談を行います。

私の考えるホテル療養の課題や今後

ホテルでの療養生活をどうとらえるか

ここまで読んで、想像通りと思われた人もいれば、想像と全然違うと思われた方もいるかもしれません。

どう捉えるかは、ホテル療養に期待する度合いによって全然違うのです。保健所からどのように説明されて入所したかや、個人がメディアから手に入れて想像した情報にもよって、入所者の期待度が大きく違う印象です。

症状がなくても、家族と一緒に住んでいて隔離が難しいから入所する人や、無料でホテルに泊まれて、ご飯も出てきてゆっくり出来るだろうと思って入所する人もいますが、

逆に、ここに来れば看護師が常駐しているし、医師にも診察してもらるし治療できるんだと、病院の入院とほとんど同じ感覚で来られる方もいます。

前者の人たちは、自由に退所出来ないことやスタッフに生活を制限されることに不満を抱き、後者の人たちは、看護師が電話連絡のみで直接部屋に行くことはほとんどなく、医師の診察もないことに不満を抱く人が多いです。

ホテル療養者のインタビューなどをメディアで見ていると、ここの捉え方の相違によるクレーム的な意見は非常に多いし、そこには私たちや保健所の情報提供・説明不足も感じます。

ホテル療養の危険性

私が派遣されているホテルでは、医療スタッフは極力、レッドゾーンに入りません。これはホテルによって、重症度や確保している人員によって異なるようです。

当たり前ですが、スタッフが不必要に感染リスクを背負うべきではありません。

ただ、県内でもホテル療養中に死亡したケースがあります。そのケースでは、夜に高熱が出ており、酸素の値は問題なかったとのこと。翌朝看護師の電話に応答せず、看護師が部屋に行くと死亡していました。

参考URL(神戸新聞NEXT):https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202103/0014170220.shtml

こういったケースは、療養者の重症度が上がっている今、今のままのホテルのやり方では残念ながら今後も起こる可能性があると考えています。

そもそも入所者に目が届かず、持続モニタリングや定期的な観察・評価が出来ないホテルで、今の入所者の安全を100%守ることには、かなり無理があります。目が届かず評価が難しい構造だからこそ、本来であれば、重症化のリスクがある陽性者に関しては、病院以上になんども直接状態を観察する必要がありますが、そこまで介入していないのが現状です。

また、私の職場は登録制の派遣看護師で成り立っており、常勤看護師はいません。派遣会社に登録している看護師が、ワクチン接種会場や療養ホテル、保健所コールセンター等、さまざまな派遣先があるなかで、今日はこのホテルで働いている、といった毎日で、慣れないメンバーだけで勤務する日が多いです。

ほぼ毎日来るフリーの看護師さんもいますが、本職の合間にだけ来る人、月に一度程度来る人、一回しか来ない人もいます。これまでの看護師経験も様々で、肺炎患者をほとんど観たことのない人もいます。

みんな真面目に働いていますが、経験や能力によって健康状態の評価に差が出ることは否めません。

以上から、今のホテル療養は、”在宅療養より多少は安心かもしれないけど、リスクはある” と私は捉えています。

ではもっとホテルで積極的な治療や観察を行うべき?

これは難しい問題です。

ここまでホテル療養者の重症度が上がっている現状では、もっと踏み込んだ治療や健康観察をするべきだという意見もあると思います。

もちろん看護師が定期的に訪室したり、病院と同じモニターを準備したり、診察や薬の処方を増やし、点滴を開始する(ホテルを病院に近い環境にする)ことも不可能ではないと思いますし、実際そういったホテルも増えています。

しかし、どう頑張ってもホテルは病院と同じになりえません。

設備や物品の問題はたくさんあるし、病院のように検査で評価することが出来ない限り、適切な治療を行うことも難しく、定期的なモニタリングも出来ないホテルでの医療行為はリスクも伴います。

人員の問題では、ホテルでの医療行為や健康観察拡大するために、感染管理の出来る看護師や医師をもっと確保して常駐する必要があります。

医療行為や健康観察が増えれば、スタッフは何度もレッドゾーンに入る必要があります。すでにレッドゾーンに入らなければいけない回数は増えていて、みんなそれに対応していますが、ホテルはそもそも治療を前提に開設されておらず、現場のスタッフのほとんどは、原則レッドゾーンに入らないことを前提に派遣されているそうです。その前提があっても、今人員を確保するのにかなり難渋している状態です。

いまの時点での私の意見

以上から、私はホテルでさらに踏み込んだ治療や健康観察を行っていくよりも、入院先を多く確保して重症リスクの高い人の入院先を増やし、病院に送ることの方が、優先順位が高いと、現段階では考えています。

すごく難しいことだと思うし移動の手間もありますが、市や県をまたげば全国的に病床は開いているし、人員も足りています。もちろん、感染者を受け入れたくない地域・病院は多いだろうし、感染リスクを背負いたくないのも当然です。でも、そこはなんとか政府に保障を増やしてもらい、理解を得るしかありません。私に出来ることは本当に微力で、もっと大きな構造が動くべきなのだと思います。

そうして入院病床を十分に確保して送れるよう早急に整備してもらって、整うまでの間は、一時待機施設のような場所を作り、医療者の目の届く場所で状態の悪い陽性者をみれる環境作りも必要かもしれません。一部地域ではすでにそういった施設がつくられており、ホテルのように医療者の目が届かない場所よりは、急変時に対応しやすいはずです。

そういった仕組みが整うまでは、ホテルや在宅で出来る医療介入を増やして耐え忍ぶしか方法が思いつきません。可能な限りホテルでも必要な患者の健康観察や医療を拡大していかなければ、残念だけど療養中の重症化や死亡ケースは起こり続ける思っています。

私はひとつのホテルしかわからないので、他の場所での情報や、もっとたくさんの意見・感想が知りたいです。

以上がPart.1でした。ここまでホテル療養の現状から課題まで書きましたが、働く側の課題や、日本の医療システムについても考えさせられることがたくさんあったので、次の記事で書いていきます。

これまでにも、コロナ病棟の現状などについて書いていますので、興味のある方には読んでいただけると嬉しいです。

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コメント

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